韓国のステマ規制完全ガイド【2026年版】|「#PR」はNG?表示広告法の表記ルール・罰則と日本との違い

はじめに|日本の「#PR」を韓国に持ち込むと、明文でNGです

韓国でインフルエンサー施策を始める日本企業が、ほぼ確実に踏むリスクがあります。

日本で慣れた広告表記をそのまま持ち込むことです。

 

日本のステマ規制では、消費者庁が「PR」を許容される表記として挙げています。ところが韓国の審査指針は、「PR」「AD」「Sponsor」「Ambassador(앰버서더)」などの英語表記を「推薦内容と同一の言語と認められない表記」として名指しでNG例に挙げています韓国の消費者向け投稿で認められるのは、原則としてハングルの「광고(広告)」「협찬(協賛)」です。

 

つまり、日韓で表記ルールが正面から逆転しています。そして韓国の罰則は日本より格段に重く、課徴金・刑事罰・無過失の損害賠償責任まで法律に明記されています。2025年には広告代理店が単独で制裁を受けた事例も出ました。

 

本記事では、韓国でインフルエンサーマーケティング・SNS施策を行う日本企業の担当者に向けて、韓国のステマ規制(いわゆる뒷광고規制)の法体系、具体的な表記ルール、罰則と処分事例、2026年6月に施行されたAI仮想人物の表示義務までを、法令原文と公正取引委員会の公表資料をもとに解説します。

 

※本記事は2026年8月時点の法令・指針に基づく一般的な解説です。個別の施策の適法性判断は、韓国法務の専門家にご確認ください。

 

韓国のステマ規制の法体系|「ステマ専用法」は存在しません

最初に押さえるべきは構造です。韓国には日本の「ステマ告示」のような専用規定はなく、既存の「欺瞞的な表示・広告」の一類型としてステマを規制しています。

 

 

根拠条文は表示広告法第3条第1項第2号の「欺瞞的な表示・広告」です。経済的な対価を受けて商品を推薦しながらその事実を隠す行為(뒷광고)は、この欺瞞広告にあたると整理されています。

 

動きとして重要なのは直近の2つの改正です。2025年10月30日の欺瞞的表示広告審査指針の改正で「SNSの뒷광고」が欺瞞広告の類型として明文化され、2026年6月1日の推薦・保証審査指針の改正でAI生成の仮想人物に関する表示義務が新設されました(後述)。規制は今も強化の方向で動いています。

 

誰が責任を負うのか

法律上の名宛人は「사업자등(事業者等)」で、責任の中核は広告主です。条文は「他の事業者等にさせること」も禁じており、代理店やインフルエンサーに違反行為をさせた場合も広告主の責任が問われます。

 

さらに2025年9月には、広告代理店が単独で制裁を受ける事例が出ました(後述のネオプ事例)。「現地代理店に任せているから大丈夫」という整理は、もう通用しません。

 

個人インフルエンサー自身への直接制裁については、事業者性がなければ対象外とする解釈が有力ですが、指針は開示義務の主体に推薦・保証人(インフルエンサー)も含めており、断定はできない領域です。いずれにせよ、推薦内容の立証責任は広告主が負うと指針に明記されています。

表記ルールの4原則|どこに・どう書けば適法なのか

推薦・保証審査指針は、経済的利害関係の開示方法を4つの原則で定めています。日本の「明瞭に表示せよ」という抽象的な基準と違い、かなり具体的です。

 

① 接近性|コメント欄・「もっと見る」の先はNG

表示文言は推薦内容と近接した位置に置き、1つの投稿として認識できる形にする必要があります。指針がNG例として明記しているのは次のとおりです。

 

  • 表示文言をコメント欄に書く
  • 「더보기(もっと見る)」を押さないと見えない位置に書く
  • 本文の中間に、本文と区別がつかない形で紛れ込ませる

 

② 認識可能性|文字サイズ・色まで問われます

背景と明確に区別でき、消費者が容易に認識できる文字サイズ・フォント・色を使うこと。音声の場合は、速度や音量の調整なしに明確に理解できることが求められます。「文字が小さすぎて見つけにくい」「背景と同系色で読みにくい」は、表示していてもNGと判断され得ます。

 

③ 明確性|OK表記とNG表記が名指しで決まっています

判定表記例
OK광고(広告)、협찬(協賛)、#광고、#협찬、유료 광고、상품 협찬、금전적 지원、대가성 광고
NG체험단(体験団)、체험 후기(体験レビュー)、선물(プレゼント)、「〜から送っていただきました」、ブランド名のハッシュタグのみ、「[ブランド名]×[アカウント名]」表記

 

「体験団」「いただきました」のような、日本のSNSでもよく見る婉曲表現は軒並みNG側です。

 

④ 使用言語の同一性|ここが日本企業の最大の落とし穴です

表示文言は推薦内容と同一の言語で書くのが原則です。そして指針は、韓国の消費者向けの場合に「同一言語とみなせない」表記として、次を名指しで挙げています。

 

日本の消費者庁が許容する「PR」は、韓国では不適切な表記の代表例です。グローバルで表記ガイドラインを統一している企業ほど、この差分を見落とします。韓国向け投稿の表記は「#광고」「#협찬」に切り替えてください。

 

媒体別ルール|Instagramではなく「表現形式」で決まります

もう一つ、日本と発想が違う点があります。韓国の指針は「Instagramのルール」「YouTubeのルール」というプラットフォーム別ではなく、①文字 ②写真 ③動画 ④リアルタイム放送 の4つの表現形式で規定しています。リールやショート動画は③動画のルールが適用される、という整理です。新しいフォーマットが登場しても、この4分類に当てはめれば自力で判断できます。

 

 

指針にはNGの実例も載っています。たとえば動画のタイトル末尾に「(협찬 받았어요)」と書いたものの、タイトルが長すぎてモバイル画面では省略されて表示されず、広告と認識できなかったケース。30分のライブ配信で経済的利害関係に1回しか言及しなかったケース。いずれも「書いた・言った」だけでは足りず、視聴者が実際に認識できるかが基準です。

なお、開示が必要な「経済的利害関係」は現金の支払いに限りません。商品の無償提供、商品券、ポイント、割引特典、共同購入の仲介まで含まれ、推薦のたび毎回表示が必要です。2025年12月改訂の案内書では、懸賞応募やベストレビュー選定を狙った投稿のように、対価が確定していなくても対価を念頭に書かれた投稿は「広告」表示が必要という運用も示されました。

 

罰則の重さ|日本とは桁が違います

韓国のステマ規制が日本と決定的に違うのは、制裁の重さです。比較表で見てください。

 

 

日本のステマ規制は行政上の措置命令が中心で、課徴金の対象にもなっていません。韓国は課徴金・刑事罰・無過失損害賠償の三段構えが法律本体に揃っています。日本の感覚で「表記は多少曖昧でも実害はない」と考えると、リスクの見積もりを一桁以上誤ります。

 

実際の処分事例

制裁は理論上の話ではありません。

大手7社への一斉制裁(2019年)。

公正取引委員会はInstagram投稿を対象とした調査で、LG生活健康、アモーレパシフィック、ダイソンコリア、LVMH系化粧品会社など7社を摘発しました。インフルエンサーに現金や無償商品を提供しながら経済的利害関係を表示させなかった投稿は4,177件、支払われた対価は総額約11億5,000万ウォン。7社合計で2億6,900万ウォンの課徴金と是正命令が課されています(ダイソンコリア単体で2,900万ウォン)。

 

広告代理店単独への制裁(2025年9月)。

公取委は広告代理店ネオプ(주식회사 네오프)に是正命令を出しました。2020年7月〜2023年12月にかけて、209の広告主の飲食・宿泊商品などをインフルエンサーにInstagramで紹介させ、2,337件の投稿で経済的利害関係を表示させなかった事案です。特筆すべきは、同社の社員がインフルエンサーに対して「협찬・광고の表記禁止」を指示し、「#광고」「#협찬」を削除させていた点が認定されたことです。調査中の自主是正により課徴金は免れましたが、「代理店がステマを主導すれば代理店自身が制裁対象になる」ことが明確になりました。

 

日本企業への教訓は明確です。現地代理店に運用を委ねる場合でも、表記ルールの遵守を契約と運用フローで担保し、投稿を自社でも抜き取り確認する体制が必要です。インフルエンサーの起用実務については韓国インフルエンサー費用の決まり方もあわせてご覧ください。

 

2026年6月施行|AI仮想人物の表示義務は日本にない規制です

2026年6月1日に施行された推薦・保証審査指針の改正で、AI生成の仮想人物(가상인물)に関する表示義務が新設されました。世界的にも早い部類の立法例で、日本には現時点で対応する明文規定が確認できていません。

内容を整理します。

  • AIなどで生成した「実在の人物と区別しにくい仮想人物」に商品を推薦・保証させる場合、仮想人物であることの開示が義務になります
  • 投稿の場合:タイトルまたは冒頭に「AI를 기반으로 생성된 가상인물이 포함된 게시물입니다(AIで生成された仮想人物を含む投稿です)」等を表示
  • 写真・動画の場合:仮想人物が登場している間、その近接した位置に「가상인물」等を表示
  • 仮想人物の推薦を「実際に使った経験」であるかのように表現し、それが事実と異なる場合は、不当な表示・広告に該当し得ます

 

改正の背景として公取委は、AIで生成した仮想の医師や教授が商品を推薦する事例の増加を挙げています。あわせて食品医薬品安全処も2026年3月に「食品不当行為緊急対応団」を発足させ、AI生成人物による専門家推薦型の広告を重点取締の対象にしました。

バーチャルインフルエンサーやAIモデルの活用を検討している日本企業は、韓国向け展開の際にこの表示義務が直接かかってきます。なお、韓国ではAI基本法(2026年1月施行)によるAI生成物の表示義務も別途動いており、AI×広告の規制は二重に締まりつつあります。

化粧品・食品・健康食品は「二重規制」に注意してください

韓国のインフルエンサー施策では、公正取引委員会の表示広告法に加えて、食品医薬品安全処(食薬処)所管の業種別規制が重なります。食品表示広告法、化粧品法などです。

 

取締りは活発です。食薬処によるSNSショートフォーム広告の集中点検では、食品は225件中147件、化粧品は100件中73件が食品表示広告法などへの違反と判断されたと報じられています。効果・効能の誇大表現(「飲むだけで痩せる」「シミが消える」等)は、ステマ表記が適法でも別の法律で摘発されます。

 

コスメ・食品・健康食品の日本ブランドは、①経済的利害関係の表示(公取委)と②効能表現の適法性(食薬処)の両方のチェックを通す運用が必須です。

 

日本企業の実務チェックリスト

韓国でインフルエンサー施策を行う前に、最低限ここを確認してください。

 

  • 表記は「#광고」または「#협찬」になっているか(#PR・#AD・体験団はNG)
  • 表示位置はタイトルまたは冒頭/写真内/ハッシュタグ1番目か(コメント欄・「もっと見る」の先はNG)
  • 動画は冒頭・末尾+5分ごとの反復表示になっているか
  • モバイル画面でタイトルが省略されても広告表記が見えるか
  • 無償提供・割引・ポイントも含め、毎回表示しているか
  • 代理店との契約に表記遵守の義務と確認フローが入っているか(「表記を外して」という指示は制裁事由になります)
  • AI生成の人物・モデルを使う場合、仮想人物の表示を入れているか
  • 化粧品・食品は効能表現が食薬処規制に触れていないか
  • 投稿後の抜き取り確認を自社で行う体制があるか

 

SNSプラットフォームごとの運用設計は、韓国Instagramマーケティング完全ガイド韓国YouTubeマーケティング完全ガイド韓国TikTokマーケティング完全ガイドで扱っています。

 

よくある質問(FAQ)

韓国の投稿に日本語で「#PR」と書くのはダメですか?

韓国の消費者向けの投稿であれば、表示は韓国語(ハングル)で行うのが原則です。指針は「PR」「AD」等の英語略語を同一言語と認められない表記としてNG例に挙げており、日本語表記も韓国の消費者が容易に理解できるとは言えません。「#광고」「#협찬」を使ってください。

 

商品を無償提供しただけで、お金は払っていません。それでも表示が必要ですか?

必要です。開示義務の対象となる経済的利害関係には、現金だけでなく商品の無償提供、商品券、ポイント、割引特典、共同購入の仲介まで含まれます。提供のたび、推薦のたびに表示が必要です。

 

違反すると誰が処罰されますか?

責任の中核は広告主です。関連売上額の2%以内の課徴金、是正命令のほか、法律上は2年以下の懲役または1億5,000万ウォン以下の罰金という刑事罰も定められています。2025年には広告代理店が単独で制裁を受けた事例もあります。個人インフルエンサーへの直接制裁は事業者性の有無によるとされますが、断定できる段階ではありません。

 

過去の投稿も遡って問題になりますか?

公正取引委員会の制裁事例は、数年前まで遡った投稿を対象にしています(ネオプ事例は2020年7月〜2023年12月の投稿が対象)。過去のキャンペーン投稿に表記漏れがある場合、修正・削除を含めた対応を検討することをおすすめします。

 

日本のステマ規制を守っていれば、韓国でも概ね大丈夫ですか?

大丈夫ではありません。表記の言語・位置・反復のルールが韓国のほうが細かく、日本でOKの「PR」表記が韓国ではNGという正面からの逆転もあります。罰則も課徴金・刑事罰を含み格段に重いため、韓国向けは韓国の指針に合わせた別運用が必要です。

まとめ|「韓国は日本より厳しい」を前提に設計してください

本記事の要点を整理します。

  • 韓国のステマ規制は表示広告法の「欺瞞広告」として運用され、2025〜2026年に指針の明文化・強化が続いています
  • 日本でOKの「#PR」は韓国ではNGです。韓国の消費者向けは「#광고」「#협찬」のハングル表記が原則です
  • ルールはプラットフォーム別ではなく表現形式別(文字・写真・動画・ライブ)で、動画は5分ごとの反復表示まで求められます
  • 罰則は課徴金(売上の2%以内)・刑事罰・無過失損害賠償の三段構えで、日本より格段に重い設計です
  • 広告代理店が単独制裁された事例(2025年)があり、「代理店任せ」はリスク管理になりません
  • 2026年6月からAI仮想人物の表示義務が施行済みです。日本にない規制のため特に注意が必要です
  • 化粧品・食品は食薬処の効能表現規制との二重チェックが必須です

 

韓国のインフルエンサーマーケティングは、正しく運用すれば依然として強力なチャネルです。規制の細かさは裏を返せば「何をすれば適法か」が明確だということでもあります。怖がって止めるのではなく、ルールに沿った運用体制を最初に作ってしまうのが結局は近道です。

InFluKは、韓国現地の視点から日本企業のインフルエンサー施策を支援しています。キャスティングから表記ルールを織り込んだ進行管理、投稿のコンプライアンス確認までを一貫してサポートします。「今の運用が韓国の基準に合っているか不安」という段階のご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
 

韓国マーケティング InFluKのサービスページはこちら:https://influk.bwell.jp/


 

参照